Public Memo For Me

プライベートなメモ帳だけど、公開することで理性を保つ

ブラック企業に勤めていた時の話しをしよう

私は俗にいうブラック企業に勤めていた。今から十年前で、新卒で入社して約5年間勤務した。死ぬほどキツかったが、時間とともに記憶が薄れてきており、なんだったらいい経験だったと思う自分がいて、少し恐ろしくなった。
 
コンプライアンス順守が当たり前になった令和においてブラック企業は減ってきていると思う。しかしもし同じ境遇の人がいたら、これを見て次のアクションに繋がればと思い、当時の記憶を整理してみた。
 
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<この記事で伝えたいこと>
ブラック企業は、閉じられた組織によって作られ、そして膨張する。
・中の人には、それが全てだと感じる。
・違和感を覚えたら、転職をする。
 
<勤めていたブラック企業のスペック>
業態:二次受けSIer
社員数(当時):500人
社長:創業者、オールバック
採用:新卒のみ
社長の口癖:窓から飛び降りるか?、命まではとらない、ここは蕎麦屋だから労働組合はいらない
 

 

今から十年前、同期100人と共に期待に胸を膨らませ入社した。まずここで気づいてほしいのは、社員数500人に対して、新卒100人つまり全社員の約20%が新卒であるという異常さである。普通の会社、例えば、20年度新卒採用数の多い”三菱電機”を例にとると、全社員数(単独)で35,649人。それに対して入社予定が880人なので、新卒率は約2.4%。ブラック企業と9倍近いギャップがあり、異常性を理解頂けるであろう。
 
これはどういうことか?答えは単純である。安くて体力のある人材を大量に雇い、客先で稼働させる。そして単価を上げないといけない年齢(概ね30歳前後)になったら辞めさせる、といったビジネスモデルである。事実、私の代で残っているは4人しかいない。10年で生存率は4%。某外資コンサルティングファームもびっくりの数字である。
 
とはいえ、ここまで異常な状態であれば、社員から声が上がるとと思うだろう。声は上がれど、大きな動きにはならない。なぜか? そう新卒採用しかいないため、他の会社を知らないのである。よって我々には、自分の会社はちょっとひどいが他の会社も濃淡はあれど大体同じではないか?という考えが心の中にあり、大きな動きにはならなかった。
 
さて話しは変わり楽しい入社式が終わると、約2カ月間にわたる研修がある。ここまでは普通の会社のように見えるが問題はこの後である。研修総括として2泊3日の合宿がある。ここで何をするか?
 
・絶対に解けない無理難題をチームごとで割り当てられる
・各チームに対して1名、講師役として3年目の先輩社員がつき、課題ができないことに対して罵倒し続ける
・罵倒され課題が終わらないので、新人たちは寝る間を惜しんで対応する
・そして最後に、自分たちで出来栄えを一人ずつ順位づけする
 
といった具合である。流石に暴力はなかったが、精神的にかなりキツかった。そして何よりも驚きなのは、講師役の「3年目の先輩社員」である。彼らはまるで社長の化身かのごとく、新人たちを罵倒しまくる。無理をして(震えながら)罵倒している先輩社員もいて、合宿の醸し出す空気感に負けて自分の意に反することをやっているなぁと思っていたが、3日目には抵抗感なく罵倒していた。人は組織に染まり、膨張することをここで学んだ。
 
そんな調子であったため、研修が終わったあとに現場に出てからも大変であった。最初の1年で15人は辞めたと思うで、新卒1年間の離職率は15%。合宿の過酷さを考えると比較的残っている方だなぁ、と思ってしまうところが、自分も組織に染まったなぁと。ちなみに入社して3年目までにさらに30〜40人近く辞め、100人近くいた同期が半分になっていた。
 
ちなみに、辞めて人の中の1ー2割は、急に来なくなったり、うつ病を発症したり普通の会社で1回でも発生したら大事件になるようなことが2ヶ月に1回の頻度であった。この手の話しを聞いても「いつものことね」と思えるメンタルモデルがここで構築されてしまった。
 
最後に会社を辞めるきっかけとなった話しをして、この本稿を締めたいと思う。30歳までの生存率が異常に低いのだが、必ずしも優秀な人が生き残っているわけではない。優秀ではないが図太い奴が生き残るケース割とがある。その課題を解決するためにもう一つ会社を作り、
 
 ”所定のレポートで社長合格が取れないようであれば、その会社に異動”
 
というルールをぶち上げた。勿論社長の独断である。30歳ぐらいまではのらりくらりやっていこうと思っていた私としては晴天の霹靂である。もう会社異動するのと転職は一緒でしょ、と思い転職に踏み切ることにした。
 
転職をして客観的な目線でこのブラック企業を眺めてみて、はじめて本当の異常性に気づくことができた。勿論、在籍時からおかしいなぁという思いはあったが、心のどこかで他の会社も似たり寄ったりなのでは?という思いもあった。だが、転職をして客観的視点でこの会社を見ると、異常性を確信することができた。
 
会社は命を懸けていくところではないし、会社に属しているとそこがすべてであると感じてしまうが、実際はそんなことはない。おかしいと感じたら、転職をしよう。
 
<おまけ>
そういえば、顧客の入館証をなくしたらクビ、というルールもあったなぁ。