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書評:良い戦略、悪い戦略

本書を買った理由は?

4、5年前、まだ音声で書籍を聞くということが今ほど主流でなかったころ、誰かに影響されてオトバング*1が手がけるサービスの会員になっていた。会員になると毎月1冊、自由に本が選べダウンロードできるのだが、毎月毎月聞きたい本もなく、ある程度期間が過ぎると権利が消滅するので、深く考えずに毎月本を選んでいた。その中の1つが「良い戦略、悪い戦略」である。そのようなモチベーションなので、当然聞くこともなく放置をしていた。

ここ最近、近くの丸善で本書が平積み*2されていて、音声を購入していることを思い出した。早速音声を聴こうと思ったが、等倍再生で13時間もあった。なので、まずは活字で読んでみようと思い購入した。

概要

本書は3部から成る。ざっくりいうと以下の通りである。

  1. 良い戦略、悪い戦略の特徴は?
  2. 良い戦略に活かされる強みの源泉は何か?
  3. 戦略を立てる上での頭の使い方

流れは、最初に良い戦略と悪い戦略の特徴を整理し、良い戦略に含まれている強みの源泉にはどのようなモノがあるのかを語り、最後に戦略を作る上でどういう気持ちや考え方でいればいいのかを語る、という構成である。

こういった類の本にありがちな、著者が考えるフレームワークを当てはめれば誰でも良い戦略ができます!というライトなものではなく、良い戦略の本質とはなにか?をさまざまな事例を使って考察している本である。それゆえページ数が400Pと大作である。

感想は?

非常に平易な言葉で書かれているので読みやすかったが、私自身が、本質に触れることができたか?と言われると疑問であるし、読み解けなかった。おそらくは読み手(つまり自分)の問題だろう。その理由は書かれている内容が、実践的というよりかは本質的な内容が多い*3からだと思う。私が戦略を策定する立場にないので、本質的な話を展開されてもピンとこないのだろう。そもそも本書の想定読者は会社における戦略を考える人、例えば経営企画とか、に向けて書かれているのではないかと推測する。しかしこんな私にでも得るものはあったのでそれを紹介する。

そんな中でも得たものは何か?

良い戦略とは?

良い戦略とは、3つの要素で成り立っているとあった。。3つとは「診断」「基本方針」「行動」である。これらを本書では「カーネル」という。

それぞれの要素を簡単に説明すると、背景を抑えるために状況を「診断」し、その上で目指すべき方向性を「基本方針」で定め、最後にアクションプランを策定し「行動」をする、であると。もう少し理解が深まるように、本書に載っていた例も含めて、カーネルの構造を簡単な図にすると以下の通りである。

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ここで気になったのは、そもそも戦略とは何か?である。例えばよく耳にする、「2025年度までに売り上げ1000億円」という売り上げを掲げたものである。上記のカーネル構造にそって考えてみると、

  • 診断:?
  • 基本方針:売上の拡大
  • 行動:?

となる。なぜ売上の拡大を基本方針と据えたのか、またそれを達成するための行動が見えてこない。よく考えると、診断や行動の部分は企業にとって秘匿すべき情報であることが理解できる*4。よってもって企業の戦略とは、表には出てこないものであることがわかるし、また戦略はワンフレーズで収まるものでないことが理解できた。

悪い戦略とは?

本書によると、悪い戦略には4つの要素、いずれかが含まれている。

  1. 空疎である
  2. 重要な問題に取り組まない
  3. 目標と戦略を履き違えている
  4. 間違った戦略目標を掲げている

それぞれ、先ほどあげた「2025年度までに売り上げ1000億円」を戦略だと謳っている企業、社長がいると仮定して考えていく。

1. 空疎である

私なりの解釈では、掲げている戦略がどの企業にも当てはまるモノが、空疎であると理解した。例えば、XXX年度までに売上XXX円。これはXXXの部分をその企業のサイズに合わせて変更すれば、どの企業にも当てはめることができる。戦略というのは、その企業で固有なものでなければならないのではないだろうか。

2. 重要な問題に取り組まない

ここでいう重要な問題とは何か?である。これらはいろんな視点で考えることができる。例えば、「自社の」重要な問題でもいいし、「業界の」重要な問題でもよい。はたまた、「顧客の」重要な問題かもしれない。いずれにせよ「誰か」の重要な問題に対する取り組みが、その企業の競争力の源泉になると理解した。ベンチャー界隈の言葉でいうとペイン。誰かのペインを解決するモノが戦略でなければならないという理解をした。

3. 目標と戦略を履き違えている

「2025年度までに売り上げ1000億円」。これを戦略とするならまさに目標と戦略を履き違えていると言える。これは、行動の結果、狙うべき目標であると言える。なぜこの目標になったのか、バックグラウンドを積み上げないと、行動に対する一貫性がでない。つまり、基本方針やそれを決めた診断がないため、環境の変化によって行動がフラフラしてしまい、結果目標を達成できない可能性がある。また仮に目標を達成したとしても、目標のために組織がリデザインされてしまい、企業の姿が変わってしまう*5のではないかと考えた。

4. 間違った戦略目標を掲げている

目標と戦略目標は何が違うのか?非常に頭を悩ませたポイントである。色々思案した結果、戦略目標とは、基本方針に対する「行動」という理解で今は無理矢理理解している状態である。ここは原書をあたって見てどう書かれているか確認したいところだが、ここでは「基本方針と行動が噛み合っていない」と理解で話しを進める。

これはどういう状況か?例えば基本方針として「商品ラインナップの拡大」としているのに、営業部門の行動(KPI)が、「顧客への訪問頻度をあげる」である。明らかに噛み合っていないことがわかる。が、本当にこんなことが起こりうるのか?疑問ではあるが、この状態がよくないことは理解できる。

悪い戦略が生まれる原因はどこにあるのか?

悪い戦略の要素として4点あげたが、カーネル構造上、どの要素が十分に実施できていない(もしくは、やってさえいないのか?)について考えてみたい。上段で、悪い戦略の要素を1つずつ考察をした結果を踏まえ、感覚的ではあるがどの工程が不十分であるかプロットしてみた。

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感覚的ではあるものの、悪い戦略の要素が生まれるのは「診断」工程に原因が集中していることがわかる。個人で考えるとこれには思い当たる節がある。例えばダイエット。ダイエットを志したときに、「XX月までにXXkg」にする、そのためには「毎日運動をする」のような計画を立ててしまう。これはカーネルに当てはめると、

  • 診断:?
  • 基本方針:XX月までにXXkg
  • 行動:毎日運動をする

となる。診断がスッポリと抜けていることに気づく。ダイエットを例にとると、今の自分の状況がどんな状況なのかを踏まえないと、「XX月までにXXkg」の妥当性も言えないし、「毎日運動をする」が現実性のある行動なのかも言えない。我々は感覚的に診断工程を飛ばして考える癖があるのかもしれない。

最後に

このように文章化してみると1部からの引用が多いことがわかった。つまり他のパートを深く読めていないのだろう。もう少し経験を積み、会社の戦略を考えるポジションを経験すると、より本書の本質を抽出できるのではないかと感じた。見えてないし分からない世界があることが体感できた、という意味で読んでよかった。また3年後に読み返そう。

*1:https://audiobook.jp/?ref=corp

*2:そこそこ古い本なのでなぜ今頃平積みされているのか?という疑問は残るが

*3:もちろん実例も豊富に載っているいるのだが、なかなか繋がりがスッキリと繋がらなかった

*4:これらがバレると、ライバルが対抗措置を講じやすくなるため

*5:悪い意味で