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読書メモ:プロフェッショナル経営参謀

0. はじめに

ふと思った。経営参謀とプロジェクトマネジメントは共通項が多いのではないかと。そんな時に出会ったのが本書である。パラパラと読むと仕事に活かせる部分が多々あるなぁと思い購入。読み終えた結論として、自分の仕事(PMO業)に活かせる部分が多々あった。そこで今回はいきなり書評に入る前に経営参謀とプロジェクトマネジメントの似ている部分について考察し、次に本書の気になった箇所を抜粋してコメントをしていく形で書き進めていく。

1. 経営参謀とプロジェクトマネジメントは似ているのか?

結論として似ている。最初に、プロジェクトマネジメントのプロジェクトとは何か?についてだが、PMBOK1によると、

独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施される有期性の業務である

簡単にいうと、他にはないプロダクトやサービスを限られた期間で作る、ことである。それをマネジメントすることがプロジェクトマネジメントである。

次に経営参謀の定義とはなんだろうか?本書によると、

経営にとって今最も重要な問いを設定し、解くべき課題を見極め、経営層を刺激する論点、材料を提示し、経営層の意思決定を後押しすること

ここから共通点を探っていくのは難しいそうだ。経営参謀の定義において、「経営」を「プロジェクト」に変え、「経営層」を「ステークホルダー」に変えると、プロジェクトマネージャ2の仕事そのものになる。

プロジェクトにとって今最も重要な問いを設定し、解くべき課題を見極め、ステークホルダーを刺激する論点、材料を提示し、ステークホルダーの意思決定を後押しすること


実は「経営」と「経営層」を自分の置かれている環境の言葉に置き換えると、ほかの仕事にも当てはまる。経営参謀を目指していないが、今の仕事少しでもいいいものにしたいと思っている人も、抽象度を少し上げて読むことで転用可能である。

早速、PMO的な視点で本書の気になった箇所を引用しコメントしていきたい。

2. PMOとして活かせる/共感できる三箇所


経営参謀に必要な能力は、意思決定のプロセス全体をデザインするセンス (P.35)

PMOに必要な能力も同じである。プロジェクトは常に何かしらの問題が発生する3ため、PMOの上位にあたるPMに意思決定を委ねる。PMOは、彼らに正しく意思決定をしてもらうために情報を集め整理しどうやって表現していつ届けるか?を常に考えている。情報を集め整理する、というところは、シニアになれば品質に差はでない4ことが多い。PMOの個性が色強くでるのか、意思決定のプロセス設計や伝え方である。収集・整理した情報がいかに素晴らしいものでも、伝え方やタイミングをミスると正しい判断ができないので、注意深く行う必要がある。


問いの前では全ての意見は平等である、少数の意見を無視しない(P.82) 自分の認知していないところにこそ、重要な論点が潜んでいる(P.91)

プロジェクトには様々な人がいる。例えば、システムを利用する人、要件定義する人、システム設計する人、プログラムを書く人、基盤を用意してくれる人 etcである。こうした人たちの意見を集め整理し答えを出すこと5がPMOに求められる。例えば問題が発生した時に、その人(というか役割)のもつ権限の大きさ、声の大きさで方向性を決めてしまい、プログラマたちの懸念が無視されるケースをいくつも見てきた。PMOとしては、役割に依らず意見は意見として認識をし、また自分が理解できないからと言って無視をせず、懇切丁寧に対話をしていくことで、誤った意思決定を阻止することができる。

自分の認知していない箇所があることを念頭に置き、丁寧なコミュニケーションがPMOには求められる。


(より論点とは)俯瞰的であってピンポイント、広く見ているがシャープ、複雑な事象だがシンプル(P.204)

本書で定めている、よい論点の定義である。端的に語れており、素晴らしいと感じた。だが、少し言葉が鋭すぎ、腑に落ちていない部分もあるので自分なりの解釈を加えてみる。

パッと見、差がわかりずらい「俯瞰的であってピンポイント」と「広く見ているがシャープ」について考えてみる。

”俯瞰的”と”広く見ている”の違いは何か?
俯瞰的とは、高い視座でモノが見れているかを指すと考える。少し強引であるが、高い視座は高い役職と言い換えてもよい。上司だったら、PMだったら、ステークホルダーだったら、といった具合である。次に”広く見ている”とは見ている範囲(幅)である。例えば、何が障害が発生したときに、その機能だけに着目をするのではなく、システム全体としてどうなのか?であったり、他システムへの影響はどうなのか?といった幅の話しである。

ピンポイントとシャープの違いは?
まずはピンポイント。これは俯瞰的の対語として用いられているので、どの視点(役職)からみてもそこだよね!、という箇所を刺さないといけない、これをピンポイントと理解した。次にシャープ、鋭さである。広くものをみて広いまま他の人に伝えようとすると、ぼんやりしてしまう。なので、相手に伝える時は、広くものは見つつも本質部分のみを抜き出し端的に伝えること、これをシャープという意味と理解した。

最後に、複雑な事象だがシンプル
障害が発生する原因は副次的なものも含めると、本当に複雑になってしまう。だが、障害発生の根本原因は余計な情報をそぎ落としていくと、実は端的に語れる。逆に語れないとするならば、根本原因が見定められていないとみるべきである。

以上の考察を踏まえ簡単な言葉で言い換えると、「高い視座で広い範囲を見つつもシンプルであるか?」。これが良い論点。自分の論点が良いものかは、これを当てはめてチェックしよう。

3. まとめ

自分の仕事にフィードバックできそうなところが多々あり、非常に楽しく読ませて頂いた。本文中にも述べたが、どんな仕事をしている人であっても本書のエッセンスは、仕事をスムーズに行うために役立つ。それだけでなく、経営参謀(≒経営企画部)がどのような仕事をしているのか、垣間見ることができる本である。

[完]


  1. プロジェクトマネジメント知識体系ガイドの略語である。

  2. 名前の通り、プロジェクトをマネジメントする人を指す。会社によっては、プロジェクトリーダと言ったりもする。

  3. プロジェクトの定義からもわかる通り、そのプロジェクト自体はみんな初めて経験をするため、予期せぬ問題が発生することはつきものである。

  4. 最近はこの傾向が強くなっているという世論に流される形で使ってみました。個人的には整理方法も個性は出ると思っています。

  5. 最終決定をするのはPMであったりステークホルダー。ただし、どの結論に落としたいかはPMOとしてwillを持つべき。