Public Memo For Me

プライベートなメモ帳だけど、公開することで理性を保つ

読書メモ:フェルミ推定の技術




  • フェルミ推定は、面接科目ではなく答えのない仕事をする上で必要な技術
  • 血の通った本、プラティカルな本

  • フェルミ推定を行う上で意識すること
    • プロセスがカッコいいか?
    • 2つ以上の選択肢を用意して、選ぶ
      • 買い手の視点、売り手の視点
    • 相手と共有する論点はどこか?

  • 答えを出すこと、答えから述べることは最低限のマナー
  • 市場規模は1年間の売上、と解釈

  • 因数分解をする時の注意点
    • 最低、三段は掘り下げる
    • 分解すればいいってもんじゃない。現実を投影できているか?
    • 網羅性よりも解像度

  • 因数分解における指針
    • ビジネスモデルを投影できているか?
    • 論点はあるか?
    • 値を出せるか?

  • 数値を作る時の注意点
    • 値は丸める、とにかく丸める、厳密な精度を出すことが論点ではない
    • 1%から2%変わると倍になるけど、その肌感覚あるか?
    • 論点になる因子は田の字で解像度をあげる

  • 田の字
    • 分解することが目的ではない
    • 意味のある差がでることを意識

  • 話し方
    • 懸念点は自分から
    • 言葉が整うと思考が整う
    • まず、相手に箱(構造)を渡す

  • 紙の色が中途半端なところで変わっている理由は何だろうか

  • 残マ = 残マーケット
    • 自分たちが取れる市場がどの程度あるか?
    • 新規事業を考える時の土台


  • 100本ノックはこの休みを使ってやる
  • どうやるかはこれから考える

書評:良い戦略、悪い戦略

本書を買った理由は?

4、5年前、まだ音声で書籍を聞くということが今ほど主流でなかったころ、誰かに影響されてオトバング*1が手がけるサービスの会員になっていた。会員になると毎月1冊、自由に本が選べダウンロードできるのだが、毎月毎月聞きたい本もなく、ある程度期間が過ぎると権利が消滅するので、深く考えずに毎月本を選んでいた。その中の1つが「良い戦略、悪い戦略」である。そのようなモチベーションなので、当然聞くこともなく放置をしていた。

ここ最近、近くの丸善で本書が平積み*2されていて、音声を購入していることを思い出した。早速音声を聴こうと思ったが、等倍再生で13時間もあった。なので、まずは活字で読んでみようと思い購入した。

概要

本書は3部から成る。ざっくりいうと以下の通りである。

  1. 良い戦略、悪い戦略の特徴は?
  2. 良い戦略に活かされる強みの源泉は何か?
  3. 戦略を立てる上での頭の使い方

流れは、最初に良い戦略と悪い戦略の特徴を整理し、良い戦略に含まれている強みの源泉にはどのようなモノがあるのかを語り、最後に戦略を作る上でどういう気持ちや考え方でいればいいのかを語る、という構成である。

こういった類の本にありがちな、著者が考えるフレームワークを当てはめれば誰でも良い戦略ができます!というライトなものではなく、良い戦略の本質とはなにか?をさまざまな事例を使って考察している本である。それゆえページ数が400Pと大作である。

感想は?

非常に平易な言葉で書かれているので読みやすかったが、私自身が、本質に触れることができたか?と言われると疑問であるし、読み解けなかった。おそらくは読み手(つまり自分)の問題だろう。その理由は書かれている内容が、実践的というよりかは本質的な内容が多い*3からだと思う。私が戦略を策定する立場にないので、本質的な話を展開されてもピンとこないのだろう。そもそも本書の想定読者は会社における戦略を考える人、例えば経営企画とか、に向けて書かれているのではないかと推測する。しかしこんな私にでも得るものはあったのでそれを紹介する。

そんな中でも得たものは何か?

良い戦略とは?

良い戦略とは、3つの要素で成り立っているとあった。。3つとは「診断」「基本方針」「行動」である。これらを本書では「カーネル」という。

それぞれの要素を簡単に説明すると、背景を抑えるために状況を「診断」し、その上で目指すべき方向性を「基本方針」で定め、最後にアクションプランを策定し「行動」をする、であると。もう少し理解が深まるように、本書に載っていた例も含めて、カーネルの構造を簡単な図にすると以下の通りである。

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ここで気になったのは、そもそも戦略とは何か?である。例えばよく耳にする、「2025年度までに売り上げ1000億円」という売り上げを掲げたものである。上記のカーネル構造にそって考えてみると、

  • 診断:?
  • 基本方針:売上の拡大
  • 行動:?

となる。なぜ売上の拡大を基本方針と据えたのか、またそれを達成するための行動が見えてこない。よく考えると、診断や行動の部分は企業にとって秘匿すべき情報であることが理解できる*4。よってもって企業の戦略とは、表には出てこないものであることがわかるし、また戦略はワンフレーズで収まるものでないことが理解できた。

悪い戦略とは?

本書によると、悪い戦略には4つの要素、いずれかが含まれている。

  1. 空疎である
  2. 重要な問題に取り組まない
  3. 目標と戦略を履き違えている
  4. 間違った戦略目標を掲げている

それぞれ、先ほどあげた「2025年度までに売り上げ1000億円」を戦略だと謳っている企業、社長がいると仮定して考えていく。

1. 空疎である

私なりの解釈では、掲げている戦略がどの企業にも当てはまるモノが、空疎であると理解した。例えば、XXX年度までに売上XXX円。これはXXXの部分をその企業のサイズに合わせて変更すれば、どの企業にも当てはめることができる。戦略というのは、その企業で固有なものでなければならないのではないだろうか。

2. 重要な問題に取り組まない

ここでいう重要な問題とは何か?である。これらはいろんな視点で考えることができる。例えば、「自社の」重要な問題でもいいし、「業界の」重要な問題でもよい。はたまた、「顧客の」重要な問題かもしれない。いずれにせよ「誰か」の重要な問題に対する取り組みが、その企業の競争力の源泉になると理解した。ベンチャー界隈の言葉でいうとペイン。誰かのペインを解決するモノが戦略でなければならないという理解をした。

3. 目標と戦略を履き違えている

「2025年度までに売り上げ1000億円」。これを戦略とするならまさに目標と戦略を履き違えていると言える。これは、行動の結果、狙うべき目標であると言える。なぜこの目標になったのか、バックグラウンドを積み上げないと、行動に対する一貫性がでない。つまり、基本方針やそれを決めた診断がないため、環境の変化によって行動がフラフラしてしまい、結果目標を達成できない可能性がある。また仮に目標を達成したとしても、目標のために組織がリデザインされてしまい、企業の姿が変わってしまう*5のではないかと考えた。

4. 間違った戦略目標を掲げている

目標と戦略目標は何が違うのか?非常に頭を悩ませたポイントである。色々思案した結果、戦略目標とは、基本方針に対する「行動」という理解で今は無理矢理理解している状態である。ここは原書をあたって見てどう書かれているか確認したいところだが、ここでは「基本方針と行動が噛み合っていない」と理解で話しを進める。

これはどういう状況か?例えば基本方針として「商品ラインナップの拡大」としているのに、営業部門の行動(KPI)が、「顧客への訪問頻度をあげる」である。明らかに噛み合っていないことがわかる。が、本当にこんなことが起こりうるのか?疑問ではあるが、この状態がよくないことは理解できる。

悪い戦略が生まれる原因はどこにあるのか?

悪い戦略の要素として4点あげたが、カーネル構造上、どの要素が十分に実施できていない(もしくは、やってさえいないのか?)について考えてみたい。上段で、悪い戦略の要素を1つずつ考察をした結果を踏まえ、感覚的ではあるがどの工程が不十分であるかプロットしてみた。

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感覚的ではあるものの、悪い戦略の要素が生まれるのは「診断」工程に原因が集中していることがわかる。個人で考えるとこれには思い当たる節がある。例えばダイエット。ダイエットを志したときに、「XX月までにXXkg」にする、そのためには「毎日運動をする」のような計画を立ててしまう。これはカーネルに当てはめると、

  • 診断:?
  • 基本方針:XX月までにXXkg
  • 行動:毎日運動をする

となる。診断がスッポリと抜けていることに気づく。ダイエットを例にとると、今の自分の状況がどんな状況なのかを踏まえないと、「XX月までにXXkg」の妥当性も言えないし、「毎日運動をする」が現実性のある行動なのかも言えない。我々は感覚的に診断工程を飛ばして考える癖があるのかもしれない。

最後に

このように文章化してみると1部からの引用が多いことがわかった。つまり他のパートを深く読めていないのだろう。もう少し経験を積み、会社の戦略を考えるポジションを経験すると、より本書の本質を抽出できるのではないかと感じた。見えてないし分からない世界があることが体感できた、という意味で読んでよかった。また3年後に読み返そう。

*1:https://audiobook.jp/?ref=corp

*2:そこそこ古い本なのでなぜ今頃平積みされているのか?という疑問は残るが

*3:もちろん実例も豊富に載っているいるのだが、なかなか繋がりがスッキリと繋がらなかった

*4:これらがバレると、ライバルが対抗措置を講じやすくなるため

*5:悪い意味で

書評:最悪の予感 パンデミックとの戦い

ツイッターのタイムラインで流れていた本書。著者については「マネーボール」という本で存じあげており良い印象を持っていたので、迷わずに購入をした。

どんな内容の本か?

なぜアメリカはコロナウィルスに対してうまく立ち回れなかったのか?を大論点に据え、疫病に対する国の施策やそれに関わっていた人をパンデミックが発生する20年前から振り返っていく。章ごとに登場人物が変わり、それぞれの視点から疫病や国のシステムに対する思いや行動を叙述し、最終的に今回のコロナパンデミックで全てが繋がる、という映画を見ているような爽快感を得ることができた。 少し難点なのは登場人物が多く、カタカナで覚えづらい(当たり前)。全く覚えることができなかったので、自分で登場人物一覧を作った。これは、本記事の最後に載せておくのでご活用いただきたい。

ここからは、私がこのコロナパンデミックに対して思っていることと本書に書いてあることが交わった点について述べていきたい。

アメリカはコロナ対応を本当にしくじったのか?

ここでいうコロナ対応は感染拡大防止のことを指す。これを確かめるため、感染者数が多い5カ国とそれに日本を加えて比較する。比較を簡単にするために、感染した人数と死亡した人数、あとそれらの割合で比較した。データは2021年8月27日時点を採用。

f:id:i-tomtom25:20210828130403p:plain

(引用)

https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data-all/

https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/

感染が発覚してから死亡に至るケースは他国と差はないが、人口あたりの感染者率を比較すると、アメリカだけ2桁台で頭一つ抜けている。特に日本と比較すると10倍近い差があることに驚いた。本書に書かれていた、感染者を検知するシステムが不全でありその結果拡散してしまったのだろうということが、ここからも読み取れる。

なぜ、アメリカは機能不全だったのか?

端的に言えば、権限が分散しており誰も腹を括って対応を扇動できなかったことが原因、と理解した。大統領、CDC*1州知事、保健衛生局 etc。

あと、そもそも自然由来のパンデミックを国として想定していなかった、もしくは、想定はしている人がいたが冷や飯を食わせれたいた、ことも原因にある。もし、2000年代に検討されていたパンデミックにかかる計画を真摯に取り組むことができていれば、状況はかなり改善できたのだろう。準備ができる素地があっただけに非常にもったいない。

誰かが今回のパンデミックのことをアメリカ版「失敗の本質」と形容していたが、的確である。自分たちの都合の良いようにしか事実を認識せず、気合いと根性で乗り切ろうとする姿勢、まさに当時の日本軍を想起させる。このことからわかる通り、日本の国民性が気合と根性を愛し備えているのではなく、人間誰しも備えている特性なのだと感じた。

パンデミックを防ぐには?

10万人都市で1人の感染者が出たら、緊急事態宣言を発出しないと防げない、書いてあっった。もちろんウイルスの再生産数によるが。東京で考えると、累計新規感染者数が140人ぐらいが緊急事態宣言のタイミングになるが、それは今から振り返ると2020年3月23日。1回目の緊急事態宣言が東京に発令されたのが2020年4月7日。日本の宣言発動はそこまで遅れていない。意外とこの国、うまくやれているのかもしれない、という自信になった。

終わりに

最初に述べたが、映画を見ている爽快感が本作品にある。ただ悲しいことにフィクションではなく、現実で起きていることだ。名もなき人*2たちの頑張りによって、最悪の最悪の事態は逃れられているが、まだまだ終わりは見えていない。コロナ収束とともにこれを原作にした映画を作って欲しい、と強く願う。


(おまけ1)学校を閉じる施策は意味があるのか?

日本の緊急事態宣言の中で学校を閉鎖する対応をとったことを記憶に新しい。私はこの施策を日本の政治家の思いつきの案だろうと考えていた。が、本書によると2003年に立案された疫病が市中で流行っている時の対策案として既に示されていた。理由は、学校環境は大人が思っている以上に密であると。例えば、狭い教室で何時間も拘束される、子供は他人との距離が大人と比較して異様に近いなど。言われてみれば確かにその通りである。モノをみるときに自分の常識だけを頼って考える癖が露呈した瞬間であった。

(おまけ2)どこかで使いたいエピソード

方針の必要性を説くシーンがあり、そこで引用されたエピソードが心に残ったので紹介する。ある部隊が雪山で遭難をしたが、たまたま地図を持っていたことで生還することができた。生還後、地図をみると今回の雪山と関係ない地図であったという話。非常に面白い話しで、要は何もない状態よりも間違えててもいいから指針やゴールを持っているとモノゴトを前に進めることができるという示唆を得ることができた。

(おまけ3)登場人物一覧

記載粒度が荒いので読みながら各人でアップデートされたい


  • ローラ・グラス:ボブ・グラスの娘、科学研究コンテストでパンデミックを扱う
  • ボブ・グラス:研究者、娘の研究を手伝う

  • マーク・ガーリー:チャリティの上司の上司

  • エンジェル:保健衛生局のトップ、チャリティの上司

  • チャリティ ディーン:医師、保健衛生官、ジャクションシティ出身、オレゴン州立大学出身、ウリバリンズからメールの転送を受ける。主人公、女性 https://www.phc.health/team-member/charity-dean-md-mph-tm-2

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  • ペイジ バトソン:チャリティと一緒に働いている(いた)看護師、
  • ティーブン ホセア:チャリティの研修医時代の師匠

  • ジーヴ:最初にパンデミック対策を政府で書いた人2005年頃
  • リチャード ハチェット:ラジーヴに協力する医師、その後ロンドンへ移住
  • カーター メーシャー:退役軍人、医師、ラジーヴに入力をする人、ほぼ主人公級の役割
  • リサ・クーニン:パンデミックの計画書に論理的なケチをつけた人、看護師

  • トム・ボサード:カーターの動向を気にする人

  • ジョー デリシ:カルフォルニア大学の医師、先生?、若く見える、優秀な人、赤電話

https://www.ibiology.org/speakers/joseph-derisi/ f:id:i-tomtom25:20210828130452p:plain

- マイケル ウィルソン:医学部の学生

*1:Centers for Disease Control and Prevention - アメリカ疾病予防管理センター

*2:本書ではL6と表現。このような危機が発生した時、事態を好転させるのはトップではなく、トップから数えて6階層目にいる人たち、という意味