ローランドベルガーのホワイトペーパーを読んで(PMO)
久しくPMOネタから離れていたが、そろそろ再開していこうと思う。再開一発目は、ローランドベルガーがPMOに関するレポート*1。いつか読もうと思いブックマークしていたが、ようやく重い腰を上げて読んでみたので、自分の経験と照らし合わせコメントをしていこうと思う。
このレポートで気になったのは以下3点である。
・PMOの成功確率は16%
・計画達成度は、経営陣のコミットメントと完全に相関する
・ITツールにこだわる
出所:*2
最初に気になったのは、PMOの成功確率が16%。調査対象は、ドイツ語圏15業種288社とのこと。この16%にはは、計画達成度が75%であったとしても「成功」とみなした時の確率である。
なるほど。私はITシステムのPMOをメインでやっており、炎上案件に行くことが多く、システムをリリースして1カ月ぐらいしたら解散、というケースが多い。そのため、当初計画した成功に対してどの程度達成したのかを分析・報告をしたことがないため、日本におけるこの数字の妥当性はわからない。しかし、プロジェクト計画書に書かれる目標は、稟議を通すために夢物語が書かれていることが多いため*3、そういった意味では成功確率が16%もない気がする。
次に経営陣のコミットメントと計画達成度は完全に相関する、について。レポートによると相関係数が0.99となっており、非常に高い*4。確かに経験上も、経営陣やトップレイヤーがプロジェクトに対して自分事として取り組んでいるところは強い。
例えば、他部門を巻き込んで問題解決をする際の調整や、必要な検証機器を買う必要があるときを想像してもらいたい。現場は、ボトムアップによる調整しかできないので、トップレイヤーに相談事項が到達するまでに時間や労力が非常に時間がかかる。また仮にたどり着いたとしても、そんな彼らは責任感が低いのでまともに取り合ってくれない。しかし自分事として参画している方々は、クリティカルな問題を自ら察知し、能動的に問題解決に動いてくれる。結果、現場が無駄な工数や時間を使わなくてすみ、その労力をシステム品質に寄与できるようになるため、品質があがり結果よいシステムができるというよいサイクルが生まれる。
プロジェクトを組成する際は、トップレイヤーを巻き込むような会議体、体制図にすることが肝要である。
最後に、ITツールにこだわる。こだわれるのであれば、こだわりたい。ただこだわるあまり、管理すべきものが管理できなくなると本末転倒である。世の中には様々な機能が搭載されているITツールが存在するが、これまでの経験上だと、どの程度の人数がどの程度のアイテム数どういった種類で管理をしたいのか、をざっくり抑え、あとは乗換自由度の高いシステムを選定すればよいと考えている。
なぜなら本当の勝負は、組織としてITツールが正しく活用できるような状態になるところにあるからだ。ITツールを入れたが形骸化しているプロジェクトは幾度となく見てきた。ITツールにこだわることも大切だが、それをしっかり使えるような組織文化を作ることのほうが大切であるため、ITツールへのこだわりはほどほどに。
以上、気になったところと自分の経験や感じたことをまとめてみた。PMOといえば、戦略コンサルというよりかは、ITコンサルの主戦場だと考えていたので、PMOに関するレポートがザ・戦略コンサルから出てくるのは意外だった。逆に、昨今のITコンサル系会社のレポートは、新しいテクノロジーを基に企業の戦略について書いているものが多い。やはり、隣の芝は青い、ということなのだろうか。
*1:PMOのポテンシャルを最大化する「視点157」
*2:https://mag.executive.itmedia.co.jp/executive/articles/2006/29/news007.html より抜粋
*3:主観的な印象で
*4:重箱の隅をつつくと、どうやって経営陣のコミットメント度合を測ったのかは気になる